雲取山登山
2022/07/20
何が人を山に駆り立てるのか,その考えについて深めここで説いてもいいのだがそれはさておき,なぜ今回雲取山に登ったのか,何が私をこの東京都最高峰にして深田久弥先生の定める100ある名山の内の一つに駆り立てたのかその特殊解についてのみ説明をするならばそれは至極単純かつ明快であろう.
山頂にある原三角測点を拝みたい,その一心である.
では何がそんなに原三角測点に惹かれるところがあったのか.
つまりそれが日本の測量の歴史において現在良く知られる三角点と呼ばれる四角形の石柱よりも歴史の古いものであり,かつ現在分かっている限りにおいてただの3つのみしか現存していないという.
史実に聞けば陸軍測量部による三角点設置に際して取り壊されたのだという.
ジオっ子というわけではないが地球を(況や宇宙を),日本を,そして人の意思を好きこのむ私の命において,原三角測点の存在を知ってから幾月夜,今からおよそ140年も昔の人々の意思を,彼らが立てたその石を見に行くというのはいつか果たさねばならぬ使命のように沁みついていた.
その日がたまたまこの日だったというだけに過ぎない.
さて,現在私が好きな動画群にRTAなるものがあり,それによれば多数の,しかも軒並み”やまぢから”の強く,そして偉大な方々がその山行の動画を上げている.
彼ら”兄貴姉貴”らの動画を充分に予習しいざ私も登り始めたわけである.
鴨沢駐車場に夜のうちに車を止め,翌朝余裕を持って6時に出発した.
登山届の提出も忘れてはならない.
いざ山行に赴く.
序盤はなんと心地よい樹林帯であっただろうか.
約10か月ぶりの本格登山とあって不安もあったがとにかく気持ちがよかった.
足が進んで進んで仕方がなかった.
途中振り返ると富士が見え,これには感動もあった.
平日とあって登山客も少なく,本当に走り出してしまいそうだった.
しかしすぐに序盤元気な自分を恨めしく思うのである.
中盤からは傾斜も急な道が増え始め下半身が思うように利かなくなってきた.
少しの休憩を挟めば息は落ち着くがどうしても脚の疲労は溜まるばかりである.
それでも景色は最高で,振り返れば富士が,富士より近景には連なる山並みが美しく,天気も雲量こそ9程度だったが直射を和らげるような薄雲でそれは登山日和と呼んで差し支えないだろう.
そして嬉しいことに途中鹿の親子に出会い,更にはコマドリと思しき頬のあたりが橙がかった小鳥のつがいとも出会った.私はこれまでコマドリという鳥を図鑑でしか見たことが無かったためそのつがいがはっきり何であったかと言うことができない上に記録となる写真も撮ることができなかったために今となっては一登山者の妄言に成り下がる訳ではあるが,恐らくコマドリであった.
自然が豊かだというのは心まで清らかになる不思議な感情である.
かくしてその頂上に立ち,そして無事に原三角測点を拝むことができた.
他方の側面には十二月とあり,冬のおそらく雪もあろうという時期にこれを運んだ先人の思いを,やはり私は考えずにはいられない.
しかしそれにしても疲労がえげつなく,下山は何度も何度もしゃがみこんでしまった.
とくに下半身は全くいうことをきいてくれなかった.
私にとって1泊推奨の山を日帰りで登ろうというのが良くなかったのは確かである.
それでも何とか無事に下山できたことは何かどこか誰かに感謝申し上げないといけない気がするのである.
さて下山後は湯に浸かり,翌日はいわゆるデブ麺を食して,これにて下山である.
久々の登山に最高の気持ちよさと多大なる反省点を経て,そしてまた次の山に私はまた駆り立てられるのだと思う.
残念ながら山頂にいた時間帯は富士に雲がかかってしまった.
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