ψの悲劇
ばらばらに歩いているのに、お互いにぶつかることなく、人が流れていく。誰もが、自分の目的を持っていて、お互いに干渉せず、しかし、争うこともなく、自分の脚で歩いている。同じパイプの中を流れる液体のように見えるけれど、けっして混ざることはない。それぞれの目的を忘れることはない。そして、しだいに分岐して、それぞれ別の道へ向かう。最後はまた一人になるのだろう。
一人から始まって、最後も一人になるのか。
生きているというのは、結局はこの流れのことなのだ。
私は、はたして生きているものといえるのか。
(p240-241)
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