四季 秋 white Autumn
「扇風機のように、前にしか風が来ないのなら、こちらを向いてくれないと困りますけれどね。たとえば、太陽はどう? メキシコが晴れていたら、その分、日本は損をしますか?」
「つまり、その差は、何ですか?」
「貴女が、太陽を好きになったか、扇風機を好きになったか、の差です」
p279
つまりその差は何だろうか.
これはずっと,本当に言葉通りずっと,私が考えていることの一つだった.
たとえば,ものすごく些細な,鍵がかかっているから中に入れない,3分前までは鍵がかけられていなかったから出入りできたのに,今は出来ない.
この鍵がかかっているいないだけの,この差.
そんなことを考える人なんていない.
しかしこうして言葉にしてみるとその本質は簡単に崩れ落ちる.
在ると,無いの差.
Aを好きになったかBを好きになったかの差.
二つの状態の差.
もちろんそれら全ては一応思考をよぎる.
その上でどうして自分はAしか選べなかったのかと思う.
けれどもどうしたってBは選べない.
こうした微妙な差の連続が,自分の過去を作っている.
あの日あの時あの場所に戻っても,でない方,を選べない.
そうした至極消極的な過去である.
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