アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
クモが餌食の身になって考え、相手の生きたい気持を思いやったりしたらたいへんだ。これはクモだけでなく、あらゆる捕食者にいえることで、猫のように高度な発達を遂げた哺乳類でも餓死せざるをえなくなるだろう。
感情移入(エンパシー)という現象は、草食動物か、でなければ肉食を断っても生きていける雑食動物にかぎられているのではないか――
なぜなら、究極的には、感情移入という天与の能力が、狩人と獲物、成功者と敗北者の境界を薄れさせてしまうからだ。マーサーとの融合とおなじように、みんながいっしょに山を登り、また一循環期が終わったときには、みんながいっしょに墓穴世界の奈落に落ちこむ。奇妙なことに、一種の生物学的保険を思わせるそれは、両刃の剣でもある。だれかが歓びを経験すれば、ほかの全員もその歓びの断片を共有できる。だが、もしだれかが苦しみを経験すれば、ほかの全員もやはりその苦しみの影から逃れられない。ヒトのような群居動物は、それによって一段高い生存因子を獲得する。一匹狼的なフクロウやコブラは、逆に破滅に近づくだろう。
人間型ロボットは、どうやら本質的に独居性の捕食者らしい。(p41-42)
蠍の火(銀河鉄道の夜)を思い出したのは私だけか?
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